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1. 歴史的に増え続けた日本のマネー
日本のマネーストック(M2)は、過去数十年にわたり着実に増加してきました。2025年4月時点で、M2は約1,266兆円と、前年同月比で0.47%増。長期的に見れば、1960年代の数兆円規模から現在の1,000兆円超へと膨れ上がっています。
この間、日銀は「異次元緩和」など大規模な金融緩和政策を実施し、マネタリーベース(中央銀行が直接供給するお金)も大きく拡大しました。
2. それでもインフレは起きなかった
「こんなにお金を刷っているのに、なぜインフレにならないのか?」という疑問は、日本経済の長年の謎でした。実際、マネーサプライが増えても、物価やGDPの伸びは鈍く、長くデフレや低インフレが続きました。
その背景には、「貨幣の流通速度」が大きく低下していたことがあります。つまり、お金は増えても人々や企業が積極的に使わず、経済全体で十分に回っていなかったのです。
3. 近年のインフレは「外からやってきた」
しかし、2022年以降のインフレは様相が異なります。今回の物価上昇は、国内のマネー増加よりも、むしろ「グローバルなインフレ現象」に引っ張られたものです。
- 世界的なエネルギー・原材料価格の高騰
- サプライチェーンの混乱
- 円安による輸入価格の上昇
これら「外部ショック」が日本の物価を押し上げ、特に食料やエネルギー価格の上昇が家計を直撃しています。
4. 国境が薄くなった現代経済
かつては「国内の金融政策=物価」という構図が強かった日本ですが、今や世界のインフレや為替変動がダイレクトに国内物価へ波及する時代です。エネルギーや食料の多くを輸入に頼る日本では、グローバルな価格変動や円安の影響が直撃します。
また、サービス価格や賃金も、ここ最近はグローバルなインフレ圧力に押し上げられる傾向が見られます。
5. これからの日本とインフレ
今後も、海外経済や為替動向が日本の物価に大きな影響を与え続ける見通しです。日銀も「インフレ率は2025年度2.0~2.5%程度で推移」と予測していますが、その背景には「輸入価格の上昇」や「海外要因」が大きく関わっています。
まとめ
- 日本の「お金の量」は歴史的に大きく増加したが、長くインフレにはならなかった
- 近年のインフレは、主に海外要因(エネルギー・食料高、円安など)に引っ張られている
- グローバル化と国境の壁の薄まりで、日本の物価は世界の影響を強く受けるようになった
「お金を刷ればインフレ」ではなく、「世界とつながることでインフレ」する時代。日本経済は今、グローバルな波に大きく揺られています。