8月15日にNASDAQ市場で華々しく上場を果たした$KYIV(Kyivstar Group Ltd.)。ウクライナ企業として初めて米国市場に上場したこの銘柄は、上場初日こそ17%下落したものの、翌営業日には一転して17%超の急騰を見せ、投資家の注目を集めています。戦時下のウクライナから生まれたこの通信大手は、なぜこれほど市場を賑わせているのか。今回はその魅力と投資リスクについて、冷静に分析していきたいと思います。

The opening bell at a stock exchange trading floor symbolizes the start of a trading session amid dynamic market activity
Contents
- 1 $KYIVってどんな銘柄?ウクライナ最大手の通信デジタル企業
- 2 事業概要と市場地位
- 3 デジタル変革への取り組み
- 4 ウクライナ情勢の影響:逆境を成長の糧に
- 5 戦時下でも堅調な業績
- 6 インフラ投資の加速
- 7 $KYIVの最近の値動き:上場後の市場反応
- 8 上場初日の洗礼
- 9 翌日の急反発
- 10 $KYIVはなぜ上昇しているのか?3つの成長ドライバー
- 11 1. ウクライナ復興投資テーマの本命
- 12 2. 米国投資家への直接アクセス
- 13 3. 先進技術との連携
- 14 投資家はどうすればいい?リスクと機会の天秤
- 15 投資機会として見る場合
- 16 注意すべきリスク要因
- 17 投資スタンス:分散投資での少額組み入れを
- 18 まとめ:復興投資のパイオニア銘柄として注目
$KYIVってどんな銘柄?ウクライナ最大手の通信デジタル企業
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事業概要と市場地位
Kyivstar Group Ltd.($KYIV)は、ウクライナ最大の通信事業者です。2300万人のモバイル顧客と110万人の固定回線顧客を抱え、ウクライナ通信市場で47%という圧倒的なシェアを誇ります。同社は1994年に設立され、30年近くにわたってウクライナの通信インフラを支えてきた老舗企業でもあります。
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生成されたファイル
親会社関係: VEONグループの傘下企業として、89.6%の株式をVEON Ltd.(NASDAQ: VEON)が保有しています。VEONは新興国市場に特化した通信グループで、10カ国でサービスを展開する多国籍企業です。
デジタル変革への取り組み
単なる通信事業者にとどまらず、Kyivstarはデジタルエコシステムの構築に積極的です。主要なデジタルサービスには以下があります:
2025年4月にはUklonを1.552億ドルで完全買収し、デジタルサービス事業の拡大を加速させています。

European Union and Ukraine flags promoting the EU-Ukraine Investment Conference in Warsaw, November 2024, encouraging investment in Ukraine's economic future
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ウクライナ情勢の影響:逆境を成長の糧に
戦時下でも堅調な業績
ロシアの侵攻開始から3年が経過する中、Kyivstarは驚異的な回復力を見せています。2025年第2四半期の業績は以下の通りです:

戦争の影響で顧客数こそ減少しているものの(移住による減少)、ARPU(顧客単価)は20.6%上昇し、収益性は向上しています。これは同社のサービス品質向上と、デジタルサービスへの需要増加を反映しています。
インフラ投資の加速
戦時下にもかかわらず、Kyivstarは積極的な設備投資を継続。2025年第2四半期のCapex(設備投資)は前年同期比72.8%増の39.3億UAHに達しました。この投資は主に:
に向けられており、戦時下のレジリエンス向上に寄与しています

A technician climbing a telecommunications tower in Ukraine, symbolizing efforts to maintain network infrastructure
。
$KYIVの最近の値動き:上場後の市場反応

KYIV株価推移:上場初日から8月18日までの値動きを示すチャート
上場初日の洗礼
2025年8月15日、KyivstarはSPAC(Cohen Circle Acquisition Corp.)との合併を通じてNASDAQ市場への上場を果たしました。しかし、上場初日は投資家の期待に反して17%下落で終了。始値14ドルから11.52ドルまで下落し、「期待先行だった」との声も聞かれました。
翌日の急反発
ところが翌営業日(8月18日)には一転して急反発。終値13.50ドルと前日比17.2%の大幅高となり、高値では15.15ドルまで上昇しました。この急騰の背景には、米ロ首脳会談への期待や、CEOの前向きなコメントがあったとされています。
$KYIVはなぜ上昇しているのか?3つの成長ドライバー
1. ウクライナ復興投資テーマの本命
ウクライナの復興需要は今後10年で5,240億ドルと試算されており、その中でもデジタルインフラは重要分野の一つです。Kyivstarはウクライナ最大の通信事業者として、この復興需要の最大受益者となる可能性があります。

2. 米国投資家への直接アクセス
$KYIVは米国市場に上場したウクライナ企業第1号です。これまでウクライナ企業に投資したくても直接的な手段がなかった米国投資家にとって、同社は「ウクライナ投資の代表銘柄」として機能します。
3. 先進技術との連携
同社は元米国務長官マイク・ポンペオ氏を取締役に迎え、イーロン・マスク氏のStarlinkとも直接衛星通信サービスで提携するなど、グローバル企業との連携を深めています。2025年第4四半期にはStarlinkのDirect to Cellサービスを商用開始予定で、これは通信の信頼性向上につながります。

A smartphone displaying Ukraine's government digital app with a Ukrainian passport and flag background
投資家はどうすればいい?リスクと機会の天秤
投資機会として見る場合
ポジティブな要素:
投資判断のポイント:
私個人としては、昨年末にウクライナ関連の復興投資ファンドに少額投資した経験があります。その時に感じたのは、「戦時下の投資は高リスクだが、復興期には大きなリターンポテンシャルがある」ということでした。$KYIVも同様の位置づけで考えています。
注意すべきリスク要因
地政学的リスク:
戦争の長期化や拡大は同社の業績に直接影響します。平和協定の進展次第で株価は大きく変動する可能性があります。
為替・規制リスク:
ウクライナ・フリヴニャの為替変動や、戦時法制下での規制変更リスクも考慮が必要です。
流動性リスク:
上場直後で取引量がまだ安定していないため、株価変動が激しくなる可能性があります。
投資スタンス:分散投資での少額組み入れを
結論として、$KYIVは「ハイリスク・ハイリターン」の典型的な新興国投資案件です。以下のような投資家に適していると考えます:
- 長期投資視点を持つ投資家(3-5年保有前提)
- 地政学リスクを理解している投資家
- ポートフォリオの一部(5%以下)での分散投資を考える投資家
- ESG・復興投資テーマに関心がある投資家
私自身は、ウクライナ復興への応援の意味も込めて、ポートフォリオの2%程度での投資を検討しています。ただし、投資判断は必ず自己責任で行い、余裕資金の範囲内での投資をお勧めします。
まとめ:復興投資のパイオニア銘柄として注目
$KYIV(Kyivstar Group)は、ウクライナ企業初の米国上場銘柄として歴史的な意義を持つと同時に、同国の復興投資テーマを体現する銘柄でもあります。戦時下という困難な環境下でも堅調な業績を維持し、デジタル変革を推進する同社の姿勢は評価に値します。
ただし、地政学リスクは常に念頭に置く必要があり、投資判断は慎重に行うべきです。長期的なウクライナ復興への期待と、短期的な市場変動リスクのバランスを考慮しながら、分散投資の一環として検討する価値がある銘柄と言えるでしょう

Aerial view of Kyiv with historic landmarks and text on U.S.–Ukraine Reconstruction Investment Fund provisions, May 2025
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8月29日にはNASDAQのオープニングベル・セレモニーも予定されており、今後の動向にも注目が集まります。戦後復興の象徴となりうる$KYIV、投資家としてその成長を見守っていきたいと思います。