「決算が良かったのに株価が下がった…なんで?」
そんな経験、ありませんか?私も最初の頃は本当に意味が分からなくて、夜中にスマホとにらめっこして答えを探していました。コーヒー片手にチャートを見ながら、「市場って理不尽だなあ」と感じたものです。
でも実は、決算が良いのに株価が下がる現象には、きちんとした理由があるんです。今日は8年間の米国株投資で学んだ「決算beat」の真実をお話しします。
Contents
- 1 決算beatの基本:市場予想を上回れば株価は上がる…はず
- 2 なぜ好決算でも株価が下がるの?7つの理由
- 3 1. 「織り込み済み」という名の期待値の罠
- 4 2. ウィスパー・ナンバーという隠れた期待値
- 5 3. 決算call での雲行きの変化
- 6 4. 人材の変化や企業ニュース
- 7 5. 株式買い戻しによるEPSの水増し疑惑
- 8 6. 機関投資家の利益確定売り
- 9 7. 地政学的リスクや市場全体の調整
- 10 セクター別で見る決算反応の違い
- 11 決算beat後に下落した株のその後は?
- 12 PEAD現象:決算後も株価は動き続ける
- 13 投資家としてどう対応すべきか?
- 14 長期投資家の場合
- 15 スウィング投資家の場合
- 16 決算前後の注意点
- 17 まとめ:決算は「期待値ゲーム」
決算beatの基本:市場予想を上回れば株価は上がる…はず
まず基本から整理しましょう。決算beatとは、企業の実際の業績がアナリスト予想を上回ることです。一般的には次のような反応が期待されます。
- 決算beat → 株価上昇
- 決算miss → 株価下落
これが投資の教科書に書かれている基本原則ですが、現実はそう単純ではありません。

決算Beat率と株価反応の時系列推移
上のグラフを見ると、決算beat率は70-80%と高い水準を維持していますが、beat後の平均株価上昇率は年々縮小している傾向が見て取れます。2024年Q2では1.0%だった上昇率が、2025年Q2には0.4%まで縮小しています。
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なぜ好決算でも株価が下がるの?7つの理由
1. 「織り込み済み」という名の期待値の罠
最も重要な理由がこれです。株価は将来への期待で動くため、良い決算が予想される場合、その期待は既に株価に反映されています。
例えば、Appleの決算発表前に「今四半期は過去最高益だろう」という期待で株価が上昇していた場合、実際に過去最高益を発表しても「想定内」として売られることがあります。これが俗に言う「買い噂で買い、事実で売る」現象です。
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2. ウィスパー・ナンバーという隠れた期待値
公式なアナリスト予想とは別に、ウィスパー・ナンバーと呼ばれる「本当の期待値」が存在します。これは非公式で、より高い期待値を示すことが多く、公式予想をbeatしても、このウィスパー・ナンバーに届かなければ株価は下落する可能性があります。
3. 決算call での雲行きの変化
数字はbeatしても、CEOやCFOが決算説明会(earnings call)で将来に対して慎重な発言をすると、一気に雰囲気が変わります。
「今四半期は好調だったが、来四半期は不透明感が強い」
こんな一言で、せっかくの好決算も台無しになることがあります。
4. 人材の変化や企業ニュース
決算と同時に重要なニュースが発表されることもあります。例えば:
- CEOの交代発表
- 大型買収の発表
- 会計上の問題の発覚
2024年のStarbucksとChipotleのCEO交代劇はまさにこのパターンでした。
5. 株式買い戻しによるEPSの水増し疑惑
企業が自社株買いを行うと、発行済み株式数が減るためEPS(1株あたり利益)が自動的に向上します。投資家がこれを「見かけ上のbeat」と判断すると、株価は下落することがあります。
6. 機関投資家の利益確定売り
決算発表後は取引量が増える傾向があります。大口の機関投資家は、この流動性の高いタイミングを狙って大量売却を行うことがあり、これが株価押し下げの原因となります。
7. 地政学的リスクや市場全体の調整
個別企業の決算とは無関係な外部要因も影響します。例えば、ウクライナ情勢やFRBの政策変更などが重なると、どんなに良い決算でも株価は下がることがあります。
セクター別で見る決算反応の違い

セクター別決算Beat率と株価反応の関係
セクター別のデータを見ると興味深い傾向があります。テクノロジー(96%)やヘルスケア(95%)は高いbeat率を誇りますが、エネルギー(45%)は低迷しています。しかし、beat率と株価反応は必ずしも比例しないことがグラフからも分かります。
決算beat後に下落した株のその後は?
ここからが重要です。決算をbeatしたのに株価が下がった株は、その後どうなるのでしょうか?
- 強気市場:平均13%下落後、最終的に51%回復(約3ヶ月後)
- 弱気市場:平均17%下落後、最終的に37%回復(約4ヶ月後)
- 全市場平均:平均15%下落後、44%回復(約3.5ヶ月後)
PEAD現象:決算後も株価は動き続ける

決算サプライズ後の株価推移(PEAD現象)
**Post-Earnings Announcement Drift(PEAD)**という現象があります。これは決算発表後も株価が同じ方向に動き続ける現象で、1960年代から確認されている市場異常の一つです。
上のグラフが示すように、正の決算サプライズ後は3ヶ月間にわたって株価上昇が続く傾向があります。逆に負のサプライズ後は下落が継続します。
投資家としてどう対応すべきか?
長期投資家の場合
私自身もそうですが、長期投資を前提としている場合は、決算による短期的な株価変動に一喜一憂する必要はありません。むしろ、好決算後の一時的な下落は買い増しのチャンスと捉えることもできます。
スウィング投資家の場合
短中期の投資家は、決算beat後の下落リスクを考慮し、以下のような戦略が考えられます:
- 決算発表前に一部利益確定
- 決算beat後の下落を待って買い増し
- PEAD現象を活用したモメンタム投資
決算前後の注意点
- 決算発表の3-5日前から株価変動が激しくなる傾向
- アフターアワー取引での大きな値動きに注意
- 決算call の内容まで含めて総合判断する
まとめ:決算は「期待値ゲーム」
決算beat後の株価下落は、一見理不尽に思えますが、実は市場の合理的な反応でもあります。重要なのは:
- 株価は期待で動くことを理解する
- 決算の数字だけでなく、将来見通しも重要
- 短期的な変動に惑わされない投資スタイルを確立する
- PEAD現象など、決算後の継続的な動きも考慮する
私も昔は決算の度にドキドキしていましたが、今では「市場の期待値ゲーム」として冷静に見られるようになりました。深夜のコーヒータイムも、今では銘柄研究の楽しい時間に変わっています。
皆さんも決算シーズンを恐れず、むしろ投資機会として活用してみてくださいね。