投資全般

【2025年6月】中東情勢の緊迫で金(ゴールド)価格が急騰した理由

投稿日:

2025年6月、イスラエルとイラン間の軍事衝突激化により、安全資産としての金に投資資金が殺到し、価格が史上最高値を更新した。田中貴金属工業の金小売価格は6月16日に1グラムあたり17,508円のピークを記録し、その後も17,000円台の高水準を維持している。この急騰は単なる短期的な現象ではなく、世界的な地政学リスクの高まりと構造的な金需要の変化を反映した動きとして、投資家の注目を集めている

A vault brimming with gold bars, representing secure assets and valuable reserves

A vault brimming with gold bars, representing secure assets and valuable reserves 

実際の価格推移と市場動向

スポンサーリンク

6月の金価格変動の詳細

2025年6月の金価格は、中東情勢の緊迫化とともに急激な上昇を見せた。実際のデータを分析すると、6月12日の17,047円から16日には17,508円まで、わずか4営業日で461円(2.7%)の大幅上昇を記録した

2025年6月の金価格推移グラフ - 6月16日にピークを記録後、調整局面に

2025年6月の金価格推移グラフ - 6月16日にピークを記録後、調整局面に

特に注目すべきは6月16日の動きで、この日に田中貴金属工業が発表した価格は前日比328円(1.91%)の大幅上昇となり、大阪取引所の金先物も16,131円まで値上がりした。その後は利益確定売りと短期的な調整により、6月20日時点では17,345円まで下落している

国際価格との連動性

ドル建て金価格も同様の動きを示し、6月16日には1オンス3,500ドルの節目を突破した。これは2025年4月の前回高値に迫る水準で、年初来では約30%の上昇率を記録している。円安進行も国内価格の押し上げ要因となり、為替と商品価格の両方向からの影響を受けた

スポンサーリンク

中東情勢の実際の展開

軍事衝突の詳細

2025年6月13日未明、イスラエル軍がイラン国内の核施設、防空システム、軍事指揮センターに対して大規模な空襲を実施した。この「予防的打撃」と呼ばれる作戦により、タブリーズ空軍基地が大きな損害を受け、イラン軍高官数名が死亡した

Military tanks and soldiers in a desert setting reflecting heightened Middle East tensions amid ongoing conflict

Military tanks and soldiers in a desert setting reflecting heightened Middle East tensions amid ongoing conflict 

イランは迅速に反撃し、約100発のミサイルと複数のドローンをイスラエル領土に発射、テルアビブなど複数都市が攻撃を受けた。この報復攻撃により63人の市民が負傷し、両国の緊張は一段と高まった

国際的な軍事展開

米国は東地中海に第3駆逐艦を配備し、空母打撃群をアラビア海に派遣するなど軍事的プレゼンスを強化している。トランプ前大統領は「イラン攻撃の是非を2週間以内に判断する」と表明し、市場の不安を一層高めている

A boy stands on a rubble-filled street in a conflict-affected area, reflecting the human impact of Middle East tensions

A boy stands on a rubble-filled street in a conflict-affected area, reflecting the human impact of Middle East tensions 

金を購入している投資家層の詳細分析

中央銀行による大量購入

最も注目すべきは中央銀行による継続的な金購入で、2022年のロシア・ウクライナ戦争以降、年間1,000トンを超える購入を継続している。2025年の中央銀行需要は1,100トンに達すると予測され、これは2010年代平均の約2倍の水準だ

中央銀行の金購入量推移 - 2022年以降の地政学リスクで購入が急増

中央銀行の金購入量推移 - 2022年以降の地政学リスクで購入が急増

特に新興国の中央銀行は、トランプ政権の関税政策と世界的な貿易戦争を背景に、外貨準備におけるドル比率を低下させる「ドル離れ」の一環として金を購入している。バンク・オブ・アメリカのアナリストは「新興国中銀は現在資産の約10%を金で保有しているが、本来は30%が適切」と指摘している

Gold bars meticulously stacked on shelves within a secure vault, indicative of central bank reserves

Gold bars meticulously stacked on shelves within a secure vault, indicative of central bank reserves 

ETF需要の構造的転換

金ETFへの資金流入も2025年第1四半期から劇的に変化した。2023年に250トンの純売り越しだったETF市場は、2025年第1四半期に226トンの純買い越しに転じ、年間では275トンの流入が予測されている

A large screen on the New York Stock Exchange trading floor displays "GOLD" with a positive price change, amidst other financial market data

A large screen on the New York Stock Exchange trading floor displays "GOLD" with a positive price change, amidst other financial market data 

この転換の背景には、欧州中央銀行(ECB)の追加利下げ期待と、中国における米中貿易緊張の高まりがある。シティグループは「ETF流入は金価格上昇の必要条件」として、この需要転換を2025年の金価格上昇の主要因に挙げている

機関投資家とヘッジファンド

機関投資家とヘッジファンドは、地政学リスクヘッジとしてポートフォリオの安全資産比率を拡大している。特にアジア域内の富裕層は、中東情勢の不安定化によりドル・ユーロ圏資産よりも金を重視する動きが顕著になっている

今後の見通しと専門機関予測

主要金融機関の価格予測

JPモルガンは2025年末にかけて金価格が平均3,675ドル/オンスまで上昇し、2026年第2四半期には4,000ドルを視野に入れると予測している。同行は「継続的な投資家・中央銀行需要が年間約710トンの純購入を支える」として、強気の見通しを維持している

各金融機関の2026年金価格目標予測 - $4,000-4,500レンジが主流

各金融機関の2026年金価格目標予測 - $4,000-4,500レンジが主流

ゴールドマン・サックスはさらに強気で、2025年末の目標を3,700ドルに設定し、2026年には4,500ドル近辺まで上昇する可能性を示唆している。同行は「極端なシナリオでは2025年末に4,500ドルも視野に入る」としている

短期的な調整リスク

一方で、短期的には調整局面を予想する声もある。バークレイズは「既にリスク要因が織り込まれている」として、今後2ヶ月で約10%の調整を予測している。原油価格への影響も懸念材料で、イラン輸出が半減すれば85ドル、最悪シナリオでは100ドル近辺まで上昇する可能性がある

長期的な構造要因

マッコーリーのアナリストは「金価格の強さは主に投資家や公的機関が信用リスク対策として金を購入する意欲の高まりに起因している」と分析している。インフレ圧力の急上昇懸念も、金の価値保存機能を後押ししている

投資家への具体的なアドバイス

ポートフォリオ戦略の見直し

地政学リスクの高まりを受け、投資家はポートフォリオにおける金の比率を見直すべき時期にある。金とドル指数の負の相関(過去3ヶ月で-0.94)を活用し、ドル安局面での金投資を検討することが重要だ

投資手法の分散化

価格変動リスクを抑制するため、一度に大量購入するのではなく、ドルコスト平均法での積立投資が推奨される。また、流動性と安全性のバランスを取るため、金ETF(SPDR Gold Sharesなど)と現物保有の組み合わせが有効だ

タイミングと長期視点

短期的な調整局面も想定しつつ、JPモルガンの4,000ドル目標を念頭に中長期ホールドを基本戦略とすべきである。中東情勢、米FRB政策、ドル動向の3つの要因を継続的にモニタリングすることが成功の鍵となる

まとめ

2025年6月の金価格急騰は、中東の軍事衝突という直接的なトリガーと、中央銀行需要やETF流入転換という構造的要因が重なった結果である。短期的な調整リスクは存在するものの、地政学リスクの長期化と世界的な「ドル離れ」の流れを背景に、金は今後も重要な安全資産としての地位を維持すると予想される。投資家は分散投資とタイミング分散を基本とし、長期的な視点で金投資に取り組むことが重要だ

スポンサーリンク

-投資全般

Copyright© InterDimension:インタディ , 2025 All Rights Reserved Powered by STINGER.