Contents
はじめに
人工知能(AI)ブームの波に乗り、近年目覚ましい成長を遂げているNVIDIA(NVDA)は、投資家の間で常に注目の的です。すでに時価総額3兆ドルを超える巨大企業となったNVIDIAの株価が、2025年にさらに大きく上昇するという予測が飛び交っています。一部のアナリストからは、2025年中までにさらなる大幅な上昇の可能性が示唆されており、中には38%以上の成長を見込む声もあります。果たして、その可能性はどれほど現実的なのでしょうか?
本記事では、NVIDIAのこれまでの驚異的な成長を振り返りながら、3兆ドルを超えた今もなお株価が上昇すると見られる理由、そして投資家がどのようなスタンスでNVIDIA株と向き合うべきかを、最新のデータとアナリストの見解に基づいて詳しく解説します。

NVIDIA株価の15年間の成長軌跡:2010年から2025年までの劇的な上昇
スポンサーリンク
NVIDIAの驚異的な成長の軌跡
NVIDIAは、PCグラフィックスからAIソリューションへと事業の焦点を移し、グラフィック処理ユニット(GPU)の発明者として、視覚コンピューティング技術の世界的リーダーとしての地位を確立しました。その成長はまさに「驚異的」と表現するにふさわしいものです。
過去5年間でNVIDIAの株価は1,400%以上もの大幅な上昇を記録し、上場以来では33万%を超える驚くべき上昇率を達成しています。特に2024年には年間で171%の株価上昇を記録しました。
株価の歴史的推移
NVIDIAの株価は2010年から2025年にかけて劇的な成長を遂げました。2010年にはわずか0.31ドル程度だった平均株価が、2025年6月現在では145ドルを超えるレベルにまで上昇しています。

NVIDIA株価の年間変動率:2010年から2025年までの成長と下落の推移
特に注目すべきは、2023年と2024年の驚異的な成長率です。2023年には239%、2024年には171%という驚異的な年間上昇率を記録しました。これは、AIブームの本格化とNVIDIAのAI市場における圧倒的な地位を反映したものと言えるでしょう。
スポンサーリンク
時価総額の急成長
NVIDIAは、AIブームの恩恵を受け、2024年6月に初めて時価総額3兆ドルを突破しました。これは、AppleとMicrosoftに次いで米国企業として3社目の快挙です。2025年6月19日時点でのNVIDIAの時価総額は、約3.55兆ドルに達しており、世界で2番目に価値のある企業となっています。

半導体業界における時価総額の比較:NVIDIAの圧倒的な市場支配力
NVIDIAが2兆ドルから3兆ドルに到達するまでの期間はわずか96日と、Microsoftの649日、Appleの718日を大きく上回る速さでした。この急成長は、AIチップに対する旺盛な需要と、NVIDIAの市場における圧倒的な優位性を示しています。
3兆ドル超えでも、なぜまだ上がるのか?
NVIDIAがすでに巨大企業であるにもかかわらず、アナリストはさらなる成長の可能性を見込んでいます。その根拠は、主に以下の点にあります。
AIブームの中核としての地位
NVIDIAは、AIの原動力となる半導体、マイクロチップ、GPUなどの重要部品の主要メーカーであり、AI革命において不可欠な存在です。同社はAI半導体市場の約85%を占める圧倒的なシェアを持っており、競合他社を大きく引き離しています。

AI半導体市場におけるNVIDIAの圧倒的シェア:2025年推定市場分布
この市場支配力は、NVIDIAが16年以上前からAI向けのGPUとソフトウェアスタック(CUDA)の開発に投資してきた結果であり、競合他社が簡単に追いつくことができない強固な競争優位性を築いています。
革新的な製品サイクルと需要
NVIDIAは、画期的なBlackwell GPUで新たな製品サイクルを開始しており、これらの製品は記録的な需要を経験しています。Blackwellチップは、前世代のHopperアーキテクチャと比較して、AI訓練タスクで最大2.6倍、推論タスクで最大3倍のパフォーマンス向上を実現しています。
NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、主要クラウドサービスプロバイダーから360万台以上のBlackwell GPUの注文を受けていると発表しており、この数字にはMetaからの注文や小規模クラウドプロバイダー、スタートアップからの注文は含まれていないと強調しています。このタイトな供給状況が価格決定力を支え、今後の四半期の売上成長につながると予測されています。
堅調な業績
2025年第2四半期の収益は300億ドルで、前四半期から15%増、前年同期比では122%増となりました。データセンター事業の収益は263億ドルで、前四半期から16%増、前年同期比では154%増です。

NVIDIA売上高の急成長:2020年度から2025年度までの5年間で約8倍に
2025年度通期の収益は1305億ドルに達し、前年度比で114%増という驚異的な成長を記録しました。この成長は、AIテクノロジーに対する需要の高まりと、NVIDIAの製品の優位性を反映しています。
2025年のNVIDIA株価予測
ウォール街のアナリストのコンセンサス中央値では、NVIDIAの1年後の株価目標は172ドル前後とされており、現在の株価から約19%から20%の上昇余地があると見られています。特に強気なアナリストは、2025年の目標株価を200ドル以上に設定しています。

NVIDIAの2025年株価目標:主要アナリストによる予測と現在価格からの上昇率
主要アナリストの見解
Bank of Americaは、NVIDIAの目標株価を165ドルから190ドルに引き上げ、これは現在の価格から38%の上昇を意味します。同社は、NVIDIAがAIチップ市場の80%から85%のシェアを維持し、4000億ドル規模の市場機会を活用できると考えています。
Barclaysのアナリストは、NVIDIAの株価が38%上昇する可能性があるとして、目標株価を200ドルに設定しました。この目標が達成されれば、NVIDIAの時価総額は4.9兆ドルに達することになります。
Citiは、NVIDIAの目標株価を150ドルから180ドルに引き上げ、「買い」の評価を維持しています。この決定は、同社の4月四半期の業績が予想通りだったことを受けたものです。
予測の根拠
アナリストの強気な見通しの背景には、以下のような要因があります:
- Blackwell製品の強力な需要: NVIDIAの新世代Blackwell GPUは「狂気じみた」需要を経験しており、2025年も供給が需要に追いつかない状況が続くと予想されています。
- AIの普及拡大: AIは初期段階にあり、製造業や物流分野における世界的な労働力不足をAI技術で解決しようとする動きが加速しています。
- データセンター事業の成長: NVIDIAのデータセンター事業は2025年第4四半期に前年比93%増と急成長しており、この勢いは2025年も続くと予想されています。
- 国際展開の拡大: 中国市場への輸出制限はあるものの、中東や欧州などの新興市場での需要が急増しています。
投資家はどうあるべきか?
NVIDIA株に対するアナリストの評価は概ね非常に高く、多くの専門家が「ストロング・バイ(強い買い)」を推奨しています。しかし、投資には常にリスクが伴うことを忘れてはなりません。
投資スタンスのポイント
長期的な視点での「買い」
アナリストは、現在の株価を買いの好機と捉えており、NVIDIAの強力な製品ロードマップとイノベーションの可能性から、長期的な投資先として魅力的だと見ています。Bernsteinのアナリストは、AI革命はまだ初期段階にあり、NVIDIAへの投資機会は「非常に大きい」と述べています。
リスク要因の考慮
投資には常にリスクが伴います。NVIDIAの将来は、以下のようなリスク要因に大きく依存します:
- 地政学的リスク: 特に米中間の緊張によるサプライチェーンの混乱や輸出制限が懸念されています。Jensen Huang氏は、中国向けの輸出制限により四半期あたり約25億ドルの収益が失われていると指摘しています。
- 競合の台頭: AMDなどの競合他社や、中国国内の半導体企業が独自のAIチップ開発を加速させています。
- バリュエーションの懸念: 一部のアナリストは、NVIDIAの株価がすでに高すぎるという懸念を示しています。
- 成長率の鈍化: 2025年後半にはNVIDIAの成長率が40%台半ばまで鈍化する可能性が指摘されています。
バランスの取れた投資戦略
投資家は、NVIDIAの成長性とリスクの両方を理解した上で、自身のリスク許容度に合わせた投資戦略を取ることが重要です。
- 分散投資: ポートフォリオ全体でのリスク管理を意識し、NVIDIAへの投資比率を適切に調整することが重要です。
- 段階的な投資: 一度に大きな資金を投入するのではなく、定期的に少額ずつ投資する「ドルコスト平均法」の活用も検討すべきでしょう。
- 長期保有: 短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、NVIDIAの長期的な成長ストーリーに焦点を当てた「買い持ち(Buy and Hold)」戦略が推奨されています。
まとめ
NVIDIAは、AIブームの牽引役として、その株価と時価総額において驚異的な成長を遂げてきました。すでに3.5兆ドルを超える時価総額を持つ巨大企業であるにもかかわらず、Blackwell GPUのような革新的な製品や、AI市場における圧倒的な支配力により、2025年以降もさらなる成長が見込まれています。
多くのウォール街のアナリストがNVIDIAを「強い買い」と評価し、2025年に株価がさらに上昇する可能性を指摘しています。特にBank of AmericaやBarclaysなどの大手投資銀行は、38%前後の上昇余地があると予測しています。
しかし、地政学的なリスクや市場の不確実性も存在するため、投資家はNVIDIAの成長性とリスクの両方を理解した上で、長期的な視点を持って投資を検討することが重要です。NVIDIAは引き続きAI革命の中心的存在であり、その技術的優位性と市場支配力は、今後も同社の成長を支える強力な基盤となるでしょう。