奥田 英朗著、”サウスバウンド”読みました。読後には、背筋が一本通るような感覚にとらわれます。何ともかっこいい親父が登場します。そして、そのかっこよさは、息子の二郎の目を通して描かれているのです。そして、かっこいい母やクールな姉も出てきます。純粋な妹も出てきます。そう、この本は、家族を中心に描かれています。家族のほのぼのとした生活が描かれててるわけではありません。魅力的な家族とその家族を取りまく環境がこの本の中に詰められています。現代社会では出会えないような家族ですが、みんな背筋が一本通ってる素晴らしい家族です。何といっても大黒柱のお父さんの背筋が鋼鉄のごとく一本見事に通ってるんです。その影響を受ける家族たちもいろいろ言いながら、このオヤジの背中を誇りに思うという、傍目には、”まじか、あんたら?”っていってしまいそうな物語です。
物語は、2部構成です。1部は、二郎の学校生活とトラブルなどに主眼を置いて、息子の葛藤と成長を見事に描いていて、読んでる人も昔を思い出しながら、そんな感じのことって、だれにでも少なからずあって、共感しながら物語を読み進めてしまうことでしょう。個人的には、まっすぐ純粋なアキラおじさんが気に入りました。時代錯誤の思想家ですが、純粋なだけに、自分の行動にも疑うことのできない、そんな人って気になってしかったないです。
第二部からは、だんだん、お父さんの背中が大きくなってきます。みんな、したいけど、きっとできないような暮らしを始めてしまいます。本当にそういう世の中があるのか?どうかはわからないですが、誰もが羨むような生活に突入します。そして、怒涛のラストと。だんだん、だんだん、この家族と一緒に暮らしてきたのごとく、いつしか、この家族の近所の住人になってしまったかのごとく、読者がこの愛しき家族を応援することは必然だと思います。このはちゃめちゃな親父の背中に思わず惚れます。はちゃめちゃなくせに、しっかり親父もしてます。こういう、絆の強い家族に憧れてしまう人も多いんではないでしょうか?
何かがしたいけど、くすぶっている人や、自分の意見を曲げてまで世の中の人と付き合うことに息が詰まってしまいそうな人は、ぜひ、この物語を読んで、大いに感化されてください。
あ、でも、あんまり感化されすぎないでください。公安に捕まってしまいますので。。。
純文学って、読んだ後、何ともいえない気持ちなります。背筋が通ります。やっぱり、人間自分のこだわる背筋って奴を一本伸ばして生きたいものです。それが漢ってやつです。いや、人間ってものです。
もし読んでなければ、みなさんも一度読んでみてください。
posted by j138